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2015.03.22

首里 お水取り行事
~辺戸から始まる水の旅~

writer : Hinata

お水取り_001

いのちを司る水

沖縄には昔、
辺戸から水をとり首里王府に献上していたお水取りという行事があった。

そして近年、琉球の繁栄と安寧を祈るその重要な儀式が
永い眠りの封印をとき現在にみごと復活した。
それは、たった一人の熱い想いから始まる…

文献によると、琉球の最北端であり始まりの聖地とされる
安須社(アスムイ)に流れる辺戸大川(ウッカー)の水を、
都である首里城まで届けていた儀式があったという。

その聖水は「美御水(ヌービー)」と呼ばれ、
首里城での正月祝いの際に献上された。古来いのちを司る水を
大切にしてきた琉球の人々にとっては、いのちの象徴のようなものだった。

かつてその大切な水を運ぶ流れは旧暦の12月20日の使者の派遣に始まり、
12月28日に取次役所が円覚寺へ奉納、歴代国王を祀る御照堂へ安置する。
そしていよいよ首里城へと献上するのだが…
ここに聖水を運び込むまでが、実は水の旅の長いドラマとなっている。

時は尚王朝の時代に遡る

当時、琉球王府と本島中の各番所の緊急文書は、
早馬を使いリレー形式で各地に伝え送られていた。
「宿次制度」と呼ばれるそのしくみの元、
道々には宿屋が整備され次第に栄えていった。

お水取りの時期になると、任命された各地の人々はその道を通り、
沖縄の最北端の辺戸岬から首里城への長く果てしない距離を歩き、
時には走りながらも水を大切に運び続けたに違いない。
時間は限られている。
ほんの数日間の内に首里城までたどり着かなければいけない。

ただただ無心に歩く。その存在を心に感じながら運ぶ。
人々の想いを受け、水は更に清らかなものとなっていく。

だが、
そんな時代もやがて過ぎ去り、祈りの水の音は静かに遠のいていった。

もう消え失せてしまったのか。そう思うほど時は経ち…今年。
何と135年の年月を経て復活したのだ。
それは「若水献上役伝(えきでん)」 (沖縄では正月など節目の時に
取った水を若水と呼ぶ) と新たに名付けられ、
各地から集まった有志達により水は運ばれ各地を歩き繋げられた。

実は「お水取り」の儀式自体は、16年前に復活を遂げ今まで密やかに
執り行われていた。そこには立役者がいた。
そう、たった一人の熱意によって琉球の水は眠りを覚まされたのだ。

しかし、それはもう彼だけの流れでは無くなってきているため
ここで敢えて言及はしないが(詳細は後述)、
その小さな一滴の水は
波紋となって確実に沖縄に大きく広がっていっている。

湧き水の遠い記憶

吉方の水は9箇所あると言う。
今年は浦添市の澤岻桶川(タクシヒージャー)のものだった。
お水取り_002
沖縄にはオモロという琉球古典の歌があり、
それの大部分は王朝を讃えたものとなっている。
その中には神歌もあって、五穀豊穣を祈る言葉を歌いながら
神下ろしをするという。その歌の後に、
聞得大君(キコエノオオキミ)という霊能者が国の繁栄を祈る。
その儀式の再現がここでは見られた。
湧き水はまるで昔の記憶を留めているかのように、
喜びの水音を立てて泡立つ。

お水取り_003
お水取り_004
お水取り_005
神女の手によってクバの葉のひしゃくで汲み上げられた湧き水は、
小さな壺に静かに収まった。

そして、今から首里に向かう。

幻想の都 首里

若水献上役伝_001
役伝で届けられた水が無事、首里の街にたどり着いた。

首里公民館では歓待の宴が人々と水を受け入れ、
歓迎の舞が繰り広げられる。
大切なお客様をもてなすかのように、水の到着を喜び歓迎する。

次々と繰り出される琉球の舞…
長い旅の終わりに、束の間の休息をとる人々。
だがまだ気は抜けない。
最後に、とても重要な事が待っている。

突然降りだした雨

まるで一年の汚れを洗い流すかのようだ。
ここから先は祝女(ノロ)や神歌を歌う者達が加わり、
一気に行列が長くなる。
若水献上役伝_002
捧げ物と吉方からの水を持った祝女達が円覚寺の正門前に列をなし
正座しうやうやしく何度も頭をさげる。
ここでは辺戸の水と、吉方の水を併せる儀式が執り行われている。

静けさの中で雨が木々の緑を濡らし、
森の匂いが祈りを深く包み込んでゆく。
鳥の鳴き声さえ、子(ね)の北方からの豊穣の使者を喜んで
迎え入れているように聞こえる。

若水献上役伝_003
若水献上役伝_004
聖水となった併せ水を持ち、長い行列はまた首里城へと歩き出す。
クェーナを歌う女性たちの歌声は、
神歌の不思議なメロディーをループし続ける。
歌声に導かれ、意識は時間を超えてシンクロするかのようだ。
行列の後に続いて歩いていると、遠い昔、
同じようにここを歩いていたような…そんな感覚にさえなる。

そしてついにたどり着く

若水献上役伝_005
濡れた石畳の階段を登ってゆくその先には、朱色の櫓(やぐら)が
まるで異次元への扉のようにポッカリと口を開けている。

首里城の御差床(ウサスカ)下の小さな入口に琉装姿の女官が二人、
聖水の到着を待っていた。
その通用口のような場所でのやり取りは、
逆に凄くリアリティを感じさせる。
まるで重要な秘密を覗き見ているかのようで、ドキドキする。
若水献上役伝_006
聖水は、無事に琉球王朝へと手渡された。

沖縄の北限からアマミキヨの祈りを込めた聖水は、長い旅を経て
人から人へ手渡し大切に運ばれ、祈りを増してここにやって来た。

そんな祈りの水を献上奉納する儀式。
沖縄の豊穣繁栄と御万人(ウマンチュ)の健康長寿の願いを込めて。

来年も、素晴らしい一年となります様に。
若水献上役伝_007

文章 Hinata
写真 Yoshiaki Ida & Hinata

イベント情報

首里公民館で行われる歓待の宴は、誰でも無料で参加可能です。
琉球舞踊などでの華やかなお出迎えののち、水を先頭に公民館から首里城
までの道を行列をなして皆で向かいます。
円覚寺での併せ水の祈りを経て首里城の坂道を登り、
久慶門に入る手前までずっとついて歩く事が可能です。

そして、文中に登場したお水取りの立役者って?
気になる人は、こちらをチェック。
吉方のお水取りは、誰でも無料で観覧が可能です。
今回の澤岻桶川ではオモロ伝承者の方より詳しい説明があり、
実際に儀式の中で神歌も聞く事ができました。
こちらから首里城まで追っかけして参加するとこの行事の大切さを
より深く感じる事が出来ると思います。
但し、湧き水の場所は少し分かりにくいので
要チェック&要レンタカーかもしれません。

ちなみにもっと深く知りたい!という方には、辺戸お水取りへの参加や、
役伝ランナーとしてのボランティア参加も可能です。

〈役伝ランナー〉http://www.wakamizu-ekiden.com/
〈辺戸お水取り 参加受付〉http://www.e-sui.com/news/1220.html

Hinata

神戸出身。西表島の生活を経て沖縄本島へとたどり着く。独自の感性で沖縄の物語を伝える。

INFORMATION最新情報は、各施設の公式ウェブサイト等でご確認ください。

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