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観光観光

2016.11.08

[来間島]命の水を巡る島旅①
絶壁の階段がつなぐ命・来間ガー

writer : 砂川葉子

ガーとは、島の言葉で井戸のことです。
サンゴ礁が隆起してできた宮古島には、山はなく川もありません。雨水は隆起した大地に浸透し、地下に貯まり、湧水として溢れ出します。そこを人々は「ガー」と呼び、飲み水や生活用水として利用し、命をつないできました。雨水が地下水となり、湧き出、ガーとなり、人が集まり、暮らしが始まるという島独自の循環があります。
史書『雍正旧記(ようぜいきゅうき)』(1727年)には、約60カ所もの井戸の名前が記されており、ガーが島の歴史に欠かせない存在であることがわかります。水がある所から、島の人が暮らしが始まり、歴史が始まります。水のある所に、人々の喜びがあり、苦しみと悲しみもあります。
来間ガーへ向かう道
島内観光のひとつとしてガーを巡れば、旅はより奥深いものになるでしょう。島の命をつないできたガーを訪ね歩く島旅、その第一弾は来間島の来間ガーです。

来間島の来間ガーの精巧さから見る暮らし

来間ガーは人里から遠く離れた、島の北崖下の海岸近くにあります。そこが、島唯一の井戸であり、宮古島から海底送水される昭和50年まで、来間ガーは島の住人の命綱でした。
来間ガー
崖に接した1番ガー、すぐ隣が2番ガー、そして歩道を挟んだ海側を3番ガーと呼ばれています。三つの井戸は連なり、3番ガーから海へと流れ込む構造になっています。
3番ガー
この三つの井戸は、用途によってそれぞれ使い分けられてきました。1番ガーは飲用水として汲み上げ、2番ガーでは洗濯をし、3番ガーは家畜を洗うのに使用してきたそうです。水をむだにせず使う知恵が感じられます。
そそり立つ断崖絶壁
ガーから見上げると、そそり立つ断崖絶壁、高さは約50mほどあります。この断崖絶壁に張り付くように続く石段が、来間ガーを語るうえで外せない最大の特徴です。来間ガーと集落をつなぐ断崖の石段は、今も残され、当時の歴史を語っています。

断崖絶壁の階段、一歩一歩がつなぐ命と暮らし

その昔、島の住民は、40m以上の断崖絶壁の細く険しい、手すりもない石段を何度も往復し、水を運んだと聞きました。
石段
しかしながら、現在は使用されていないため、石段は草に覆い尽くされようとしていました。草をかき分け、上っていくと、あっという間に大粒の汗が流れ落ちてきます。精巧に組み合わされた琉球石灰岩の階段は絶壁に張り付くように続きます。眼下に広がる紺碧の海を見ているとめまいがしてくるような急高配です。
眼下に広がる紺碧の海
この道をブリキ缶を頭にのせ、あるいは天秤棒を肩にかつぎ、この道を行き来したのかと思うとためいきが漏れます。しかも、それは女子どもの仕事で、小学生も高学年になれば、学校が終わるとまず来間ガーへ行き、水ガメがいっぱいになるまで何往復もしたそうです。

島出身の女性は語ってくれました。
「一段一段と石段を踏みしめるたびに当時の思い、風景がよみがえってくる。来間の人間はこんな風に命をつないできたかと思うと思い出しても涙が出てくる」

来間ガーの古謡「かすきだな」、愛おしい人を思い登る石段

そんな来間島の住民の苦しさを和らげたのだろうと思わせる謡があります。「かすきだな」という来間ガーを謡った古謡が残されています。
ヤイヤガマヨーイ クリマガーヌヨー
ムムダンナ イランチャマーン
ヌユスガツナマイ ウワガクトユド
カナシャガクトヌド バッシリラルンチャヨー
ヤイヤガマヨーイ ササラニスヌヨー
ウスニスヌ イランチャマーン
スウギバマイヨー ウワアガ カヂアヌドゥ
カナシャガ カヂアヌドゥ
カバリャウスヨー
「来間ガーの百段の階段を上りながらあなたのことを愛おしいことを忘れられないよ、南の風、北の風が過ぎればあなたの匂いが、愛おしい匂いが香って来るよ」という意味です。
石段のアップ
島人は謡い、愛する人を思い、苦しみを超え、来間ガーへの石段を一日何往復もしました。

島の命の原点・来間ガー

来間ガーには、辛く苦しい思い出ばかりがある訳ではありません。石段を友と転がるように走り競い合って降りたこと、漁の後には、3番ガーから海に流れこむ水を浴びてから家路についたこと、来間ガーの思い出を島人に聞くと、話は尽きることはありません。
来間ガーから見える海
来間ガーから水を汲み上げ、石段を行きかう生活は遠くなった今でも、毎年8月には、来間ガーへの感謝の祈りが捧げる神事が行われます。3年ほど前には、自治会が中心となり、開発によって堰き止められていた3番ガーの水の流れを元に戻す取り組みが行われたり地元のNPO法人を中心に来間ガー周辺の観光案内も始まり、島人の井戸への敬意は薄れることはありません。
来間ガーへ向かう石段
来間ガーは、昔も今も変わらず来間島の原点であり続けています。島の住人は、来間ガーが命の源であるとを決して忘れることはなく、その思いは確実に子々孫々と受け継がれているのです。

スマートポイント

  • 来間島にある来間ガーは、島唯一の井戸で島の命の源として今も大切にされている神聖な場所です。
  • 来間ガーへの絶壁の階段を上り下りする際には、大変な急こう配なのでくれぐれも気を付け、自己責任の上で行動しましょう。また、来間ガーには来間漁港からアクセスできます。
  • 来間島は宮古島と橋でつながり、竜宮展望台やカフェやお土産屋もありながらも離島独特ののどかさもあります。半日ほどかけてゆっくりと観光するのもおすすめです。

ライターのおすすめ

漁港側から来間ガーに入る時は、井戸の入り口にある巨石で手を合わせて、ご挨拶をしてから、入りましょうね。

砂川葉子

岐阜県出身、宮古島諸島のどこかの小さな島に在住。農業と民宿業、島興し業と並行してライター業にも携わる。

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