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2020.02.05

[伊良部島]大漁旗靡く旧正月
漁師町に今も生きる旧暦文化

writer : 砂川葉子

旧暦は島での暮らしにおいてとても身近な存在です。
島で行われる神事や伝統行事の多くは旧暦で行われますし、旧暦の1日と15日には火の神を拝んだりと、人々の生活意識や文化の中に旧暦は欠かせないもので、多くの県民は新暦を見ながら旧暦も確認しながら生活しています。
よく知られている沖縄の旧暦の行事といえば、旧暦7月13日から15日の旧盆ではないでしょうか?
お盆が旧暦なら、正月はどうか?というと…
以前は旧正月と新正月をの両方を祝う風習がありましたが、1956年に琉球政府の新生活運動推進協議会による新正月一本化運動が起こり、新正月のみを祝うスタイルが一般的になってきました。
伊良部島の佐良浜地区
しかしながら、今でも旧暦を重んじ、旧正月を祝う地区があります。
そのひとつが漁師町である伊良部島の佐良浜地区です。
大漁旗が揚がり、船上から神に祈りをささげ、親戚一同が集い祝う、今ではもう見られなくなりつつ風景が佐良浜にはありました。

旧暦の大晦日の伊良部島・佐良浜地区

旧暦の大晦日の夕方、漁師町である伊良部島・佐良浜地区に足を伸ばしてみました。
佐良浜漁港に降りる急坂に差しかかると、早速大漁旗が見えました!
何艘かの船にはすでに大漁旗が揚げられています!
実は、宮古島周辺離島に17年在住の現地ライターの砂川ですが、大漁旗を見るのは生まれて初めてです。
大漁旗はこの海と空の青に、なんと美しく映えるものなんでしょう。
佐良浜漁港
今日は冬とは思えぬとてもポカポカ陽気、
旗がバタバタと南風になびく音、波に揺れる船がきしむ音、
磯の香り、なんだかとてもワクワクしてきます。
大漁旗
恵丸の船長さんに聞くと、大漁旗は前日から揚げる人もいれば、当日の夜明け前に来て揚げる人もいるようです。
ところで、どうやって大漁旗は揚げているんですか?聞いてみると、なんと釣り竿でした!マグロの羽釣り用の竿だそうで、よく見ると確かに釣り針がついていました。
マグロの羽釣り用の竿
船長によると、だいたい旧暦の3日までは大漁旗を揚げ、漁もお休みするそうです。

伊良部島・佐良浜地区の旧正月の昔と今

「潮を見るのは旧暦だからさ、漁師には欠かせないわけ」
恵丸の船長が教えてくれました。
海の潮の満ち引きは魚の活動に影響するため、新暦より旧暦の方が漁師の生活には密着しているのです。
自然と向き合って生きる漁師だからこそ、旧暦はしっかりと体に刻み込まれいて、だからこそ新正月よりも旧正月を重んじ、今でも旧暦で正月を祝うそうです。
大漁旗のアップ
「昔はもっと盛大だったさあ。今は昔ほどじゃないよ」
と船長はいいます。昔は、三線や太鼓を鳴らしながら20名ほどが即席の音楽隊を組んで、島を練り歩き、各家々を回りお祝いをしたそうで、それはそれは賑やかに旧正月を祝っていたそうです。
昨日壊してしまったという竿の手入れをしながら、昔を思い出すその顔はちょっと寂し気でした。
恵丸と船長
それでも、「旗も揚げたし、今日からもう正月さあ」と、奥様が明日の正月準備の料理も作っているとのことで、満面の笑みを浮かべて帰って行かれました。
日が暮れて来た漁港

航海安全と豊漁を祈る朝、漁師町に日が昇る

夜明け前、対岸の宮古島が少しずつ明るくなってきています。
夜明け前
今日は、旧暦1月1日、旧正月です。
風呂敷包みを下げた島の漁師達が、港へ向かう坂道を降りていきます。
港へ向かう漁師たち
7時26分、対岸の宮古島から朝日が昇ってきました。
風になびく大漁旗も船も佐良浜の集落も光にすべてがキラキラと輝き出します。大漁旗は昨日よりも誇らしげに見えます。
朝日が昇ってくる様子
漁船と夜明け
漁師さんが、海に泡盛を捧げ、供え物をし、今年の航海安全と豊漁を祈っていました。
今年の航海安全と豊漁を祈っている漁師さん
海に泡盛を捧げる漁師さん
こちらは、船上で宴会が始まっています。
船上の宴会
なんと朝の4時から飲んでいるそうで、私もちゃっかりご相伴にあずかりました。それにしても、蛸も豚肉も大きく厚切りで、そんなんところにも漁師らしさを感じました。
蛸や豚肉を使った料理
今日のこの日、旧正月を祈りと漁師の絆をもって迎える、それは昔も今も変わりない光景です。雲一つない青空、伊良部島・佐良浜漁港には清々しい空気が満ち満ちていました。

家々でも盛大に祝い、命を喜び、絆を深める旧正月

船上でお祝いをしたら、次は自宅に帰って家族や親戚一同で旧正月を祝います。私もお呼ばれいただいたお宅におうかがいさせていただきました。
玄関先から正月モードです。
正月モードな玄関先
これ、去る新正月からそのまま放置してあったわけではありませんよ。
花瓶に生けられた緑の葉は、幸せの木といって、佐良浜では定番の正月飾りだそうです。
仏壇にもたくさんのご馳走が供えられ、テーブルには正月料理が並び、ここでも一品一品が大きく豪快でした。女性らは忙し気に台所を動き回り、次から次に来る親戚や知人らには「おめでとう」、「おめでとう」と笑顔が溢れています。
正月料理
船乗りのことわざに「板子一枚下は地獄」というのがあります。
命がけの仕事だからこそ、陸で家族と過ごす時間はかけがえのないものなのでしょう。
家族や親族、仲間と過ごす時間を存分に楽しみ、命を喜び、絆を深める、漁師たちの骨休みの時間。
漁師達は愛する人達と愛する島で、心ゆくまで旧正月を祝います。

※こちらは、公開日が2017年3月3日の記事となります。更新日は、ページ上部にてご確認いただけます。

スマートポイント

  • 伊良部島や漁港のある池間島や久松地区では、今でも旧正月には大漁旗を揚げ旧正月を祝う風習が息づいています。
  • 沖縄県のスーパーでは、旧正月用の花卉やオードブル、お供え用の菓子などが売られています。
  • 沖縄では、神事や伝統行事は旧暦で行われることが多く、旧暦は欠かせない存在です。中でも漁師の暮らしはより旧暦と密接にかかわっているため、今でも旧暦を重んじ旧正月を祝う風習があります。

ライターのおすすめ

佐良浜に行って、私の時間軸も旧暦にきっかりと合わさっているのを感じました。日の出とともに私の中の体内時計もジリリリリと鳴り、何かが私の中で弾け始まるのを感じました。

砂川葉子

岐阜県出身、宮古島諸島のどこかの小さな島に在住。農業と民宿業、島興し業と並行してライター業にも携わる。

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