* menu
閉じる

観光観光

2016.05.04

もう一つの沖縄をたどる旅.5
シムクガマ

writer : 福田展也

もう一つの沖縄をたどる旅』でこれから2回に分けてご紹介する戦跡は、沖縄本島中部、読谷村にあるシムクガマとチビチリガマという明暗がくっきり分かれた二つのガマです。
海岸風景
ガマとは琉球石灰岩でできた自然洞窟のこと。沖縄の眩しい日射しを遮るように、鬱蒼とした亜熱帯の樹々が枝葉を広げているせいか、目に見えないものがユラユラと、たゆたっている気配が感じられる神秘的な空間です。

この二つのガマで事件が起きたのは歴史をさかのぼること71年前。沖縄本島中部にある読谷から北谷かけての海岸にアメリカ軍が上陸をした1945年4月1から2日にかけてのことでした。

そして、直線距離でわずか1kmしか離れていない場所で、天国と地獄ほども違うことが起こったのです。

今回は明暗を分けた二つのガマのうち、「明」にあたるシムクガマを紹介します。

青空と暗闇のコントラスト

シムクガマを訪れた日の沖縄は、かざした手が透けそうなくらい空が青く澄み渡っていました。あまりに爽やかだったので、深い悲しみがかつてこの島々を飲み込んだことが、遠い世界で起こった物語のように思えました。
農作業風景
当日、案内していただいたのは読谷村史編集室の上地克哉さん。沖縄戦をはじめ沖縄の歴史や文化財をライフワークにしています。

本島南部にある南風原文化センターに勤務していた時には、多くの人に沖縄戦を体感的にとらえてもらおうと、町内にある旧沖縄陸軍病院壕の当時の匂いを再現する取り組みに中心的にかかわっていました。

現在から過去へタイムスリップ

緑まぶしいうりずんの林

地元の小学校に通う上地さんの二人のお子さんと一緒に、緑まぶしいうりずん(初夏)の林を抜け、ようやくたどり着いたシムクガマ。全長2.6kmあるというガマは、大きな口を開けて深い暗闇をのぞかせていました。
大きな口を開けたシムクガマ
光輝く現在から深い闇の奥にある過去へとさかのぼる旅はこのように始まったのです。

71年も前のことですから、目の前に広がるこの場所と、実際に起こった出来事とを結びつけるのはそう簡単なことではありませんでした。
シムクガマからの景色
暗闇に目が慣れたころ、ポツリポツリと語られていた上地さんの言葉のおかげで、ようやくあのころにタイムスリップすることができたのです。

1000人の命を救ったのはハワイ帰りのウチナーンチュ

ガマの中の風景
4月1日、シムクガマの前に銃を持った米兵が現れた時、ガマの中にいた1000人近い住民の中には上地さんのお母さんの姿もありました。

当時の国の教育で「鬼畜」と教え込まれていたアメリカ兵。初めて見る外国人の姿に恐れおののく住民達。

パニックに襲われた住民の幾人かは、何もせず無抵抗のまま殺されるくらいなら、戦って死のうと竹槍を手にガマの外へと向かったそうです。
川のせせらぎ
「だいじょうぶ、アメリカ兵は民間人を殺したりはしないから」

移民先のハワイから沖縄に帰ってきた比嘉平治さんと比嘉平三さんが混乱する仲間達を無事説得。

彼らがもたらした正しい情報のおかげで、誰一人として集団自決で命を落とすことがなく、愛する肉親に手にかけることもなく、避難していた住民は米軍に投降し保護されました。

比嘉さんたちは米軍が上陸する前から、「あんな大きな国に戦争を仕掛けてどうするんだ」と、親しい人に話していたそうです。

「死ぬことしか考えていなかった」

暗闇の中から見える緑の風景
「アメリカ兵に女性はいたぶられ、大人も子どもも八つ裂きにされて殺される」。アメリカ軍の攻撃を目の前にして、少なからぬ人が「死ぬことしか考えていなかった」という沖縄戦。
シムクガマの碑
上地さんは次のように話をしてくれました。

「被害がなかったシムクガマでも一部の若い女性は一週間近くもガマから出なかったようです。私の母の家族も米兵に何をされるかわからないと、しばらくは残っていたそうです。チビチリガマに比べると『何もなかった』といえるかもしれませんが、あの時のことがトラウマになって二度とシムクガマには近づきたくないという人は母も含めて少なくないのです」

歴史を振り返ることで未来が見える

「アメリカ人は鬼畜だ」という戦時下教育と、日本軍が実際に行ってきた蛮行を、アメリカ軍も同じようにするはずだという間違った情報がまことしやかに信じられていた当時、アメリカ人を実際に知る2人の存在が、文字通りの明暗を分けたのです。
穏やかな海
沖縄戦が終わった後、比嘉さんた達「人に手を上げてはいけない。嘘もついてはいけない」と、ことあるごとにかわい孫達を諭していたといます(『もう一つの沖縄をたどる旅 vol.6 チビチリガマ』に続く)。

スマートポイント

  • ○問い合わせ先
    波平公民館
    ☎︎098-958-2229
    住所:沖縄県読谷村波平61
  • 読谷村の過去と現在までの歴史の連なりがよくわかるサイト『読谷バーチャル平和資料館』もおすすめです。
    HP : http://heiwa.yomitan.jp/index.html
  • シムクガマ内には小さな川が流れ込んでいます。急な雨で急に水量が増すことがります。シムクガマを訪れる際には天候の確認を十分に行ってください。また、足場が悪いのでサンダルや草履ではなくスニーカーがおすすめです。

ライターのおすすめ

読谷村内には世界遺産にしていされている座喜味城跡 や、日本で唯一物を売っていない道の駅「喜名番所」など、近隣には歴史的なスポットも豊富です。ぜひ、いろいろな読谷村に触れてみてください。

福田展也

目下の趣味はサーフィン・沖縄伝統空手・養蜂。心で触れて身体で書けるようになることが10年後の目標。

スポット詳細

沖縄観光モデルコース

記事検索

ツアー検索

0